肥満細胞腫
肥満細胞腫(MCT:Mast Cell Tumor)は、肥満細胞という免疫細胞が異常増殖して発生する腫瘍です。
犬や猫では比較的よく見られる腫瘍ですが、「偉大なる詐欺師」と呼ばれることもあり、多種多様な外見を示す悪性腫瘍です。
犬の肥満細胞腫
●発生頻度
犬の皮膚腫瘍の中では最も多く発生します。
パグ、フレンチ・ブルドッグ、ボストン・テリア、ラブラドール・レトリーバーなどが好発犬種です。
●症状
腫瘍は皮膚や皮下に発生し、周囲の皮膚が赤くなったり、痒みが生じることもあります。
これらはダリエ徴候と言われ、腫瘍細胞に含まれるヒスタミンやヘパリンなどの化学物質が原因です。
猫の肥満細胞腫
●発生頻度
猫の皮膚腫瘍の中では2番目に多く発生します。
●症状
犬と同様に皮膚に発生することが多いですが、脾臓や消化管など内臓に発生することもあります。
検査・診断
多くの場合は細胞診検査によって、院内で診断をつけることが可能です。
ただし、悪性度や浸潤性を調べるには病変を切除する手術を行い、院外での病理検査が必要です。
また、肥満細胞腫の中には、c-KITといわれる遺伝子が変異しているものがあり、それにより薬剤の有効性が変わります。
細胞診あるいは病理検査の際に、同時に遺伝子検査もすることができます。
治療
●外科手術
治療の第一選択は外科手術であり、悪性度の低いものなら完全治癒が望めます。
犬の肥満細胞腫は周囲に浸潤していることが多く、正常組織を含めた広めの切除が必要です。
切除範囲によっては皮膚が足りなくなるので、皮膚形成が必要になることもあります。
●化学療法
外科手術で腫瘍を取りきれない場合や、手術ができない場合に行います。
ステロイド剤や抗がん剤を使用しますが、副作用に注意して、症例の状態を考慮しながら治療を進めます。
また、c-KIT遺伝子変異の結果を見て、副作用の出にくい分子標的薬を使用することもあります。
さいごに
当院は腫瘍外科に力を入れており、中でも四肢の腫瘍切除と皮膚形成を得意としています。
たとえば、他院で断脚手術を勧められた状況でも、場合によっては脚を残す手術が可能かもしれません。
また、抗がん剤や分子標的薬も各種準備していますので、より多くの選択肢をご提案できると思います。
肥満細胞腫、皮膚腫瘍、その他の腫瘍・がんに関して、いつでもお気軽にご相談ください。
玉川学園犬猫病院
院長 獣医腫瘍科認定医II種
綿貫 貴明