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犬・猫のリンパ腫

犬猫のリンパ腫のコラムのサムネイル

リンパ腫は、リンパ球が異常増殖することで、リンパ節やリンパ組織が腫瘍化する疾患です。
犬猫ともに、腫瘍疾患の中では発生頻度の高い悪性腫瘍です。

●発生部位による分類

・多中心型リンパ腫

犬で最もよく見られるタイプで、全身のリンパ節が腫れてきます。
下顎リンパ節や膝窩リンパ節が、気づきやすいです。

・胃腸管リンパ腫

猫に最も多く見られ嘔吐や下痢などの消化器症状、体重減少が見られます。
発見するには超音波検査などの画像検査が必要です。

・皮膚リンパ腫

皮膚にしこりや潰瘍を形成します。
皮膚炎が治りにくい場合は、リンパ腫の可能性を考える必要があります。

・鼻腔リンパ腫

猫で2番目に多く発生します。慢性鼻炎や鼻出血の症状が見られます。

・縦隔リンパ腫

若齢の猫に見られ、胸部に発生します。呼吸器症状や胸水が見られます。

・その他(肝臓・脾臓、腎臓、中枢神経)

身体中のどこにでも発生するので、その臓器によって症状は様々です。

●症状

・リンパ節の腫れ(首、脇の下、足の付け根、膝の裏)
・体重減少
・発熱
・食欲不振
・嘔吐、下痢
・呼吸困難
・皮膚のしこり、潰瘍

●検査、診断

・身体検査
触診でリンパ節の腫れなどを確認します。

・細胞診
リンパ節や腫瘍から注射針で細胞を採取し、顕微鏡で腫瘍細胞を検出します。

・組織生検
リンパ腫のタイプによっては、腫瘍の一部もしくは全部を切除し、詳しい検査を行います。

・画像検査
超音波やレントゲン検査で、内部の腫瘍を検出したり、腫瘍の広がりや転移を確認します。

・血液検査
骨髄への影響の有無と、治療を行うにあたっての内臓機能を確認します。

・遺伝子検査
診断の根拠を高め、タイプ分類を行うことで化学療法の有効性を予測します。

●高悪性度vs低悪性度

多くは高悪性度リンパ腫であり、1ヶ月単位で急速に進行していきます。

一方で低悪性度リンパ腫も存在し、年単位の慢性経過を辿ります。

高悪性度・低悪性度の診断には細胞診検査もしくは組織検査が必要です。
これらの結果次第で、治療開始のタイミングや治療内容が異なります。

●治療

・化学療法

リンパ腫に対して最も使用される、いわゆる抗がん剤治療です。
複数の薬剤を使用する多剤併用療法や、1種類だけ使用する単剤療法があります。
リンパ腫のタイプ・症例の状態・ご家族の意向などを考慮して選択していきます。

・外科手術

一部分に限局したリンパ腫では、外科的切除を選択する場合もあります。
胃腸管リンパ腫が穿孔した場合などは、緊急手術が必要です。

・放射線療法

鼻腔リンパ腫など、特定の部位に発生したリンパ腫に対して行います。

●予後

リンパ腫のタイプ・発生部位・進行度・治療反応によって予後は異なります。
リンパ腫は化学療法により寛解(腫瘍が一時的に消失すること)が得られることも多いですが、完全な治癒は難しい病気です。

リンパ腫は深刻な病気ですが、適切な治療と管理により生活の質を向上させ、寿命を延ばすことは可能です。
そのためには、早期発見と早期治療が重要なポイントになります。

定期的な健康チェックと、心配なことがあれば早めに病院を受診することをお勧めします。

腫瘍に関していつでもご相談ください
玉川学園犬猫病院
院長 獣医腫瘍科認定医II種
綿貫貴明

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